漢文読解のコツ

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漢文を読む要領としましては、大まかにでも漢文の構造を捉えるということであります。これを体得していただければ、もしくは意識しながら勉強なされば、非常に速やかに読書力がつくのです。ちょっと例を見てみましょう。

  • 泰西有云造化造人兩耳兩目兩手兩足鼻孔亦偶唯一其口口又有齒有似城壘其外有脣有似郭門百爾君子以此可知聞見欲多語言欲稀 (中村敬宇)

こういうものを読むときに妄りに一字づつに着目するのではなく、これを一つの纏まった思想とするのならば、これをまず二つに分けるのです。文の分析と云えばすぐに「私は/今日/初めて/漢文を/勉強しました」式の分解を想像する方もおられるかも知れませんが、そうではなく以下の図の如きを指して分析とは言うのです。

漢文のコツ思想分析

まづ一つの大なる思想を二つに分け、その分かれたものを各々再び分解するのです。そうして出来あがった概念が更に分解できるのなら同様に分解をしてゆくのです。上記の日本語の例で申せば、まづ「私は」と「今日初めて漢文を勉強しました」とに分けるのです。「私は」はこれ以上分解する必要はありません。「今日初めて漢文を勉強しました」に対して主語です。然るに「今日初めて漢文を勉強しました」の方は更に分解する余地がありますので分解をします。すなわち「今日」と「初めて漢文を勉強しました」とに分けます。「初めて漢文を勉強しました」の方は更に分解できますのでこれを分解しますと、「初めて」と「漢文を勉強しました」とになり、後者を更に分解して、「漢文を」と「勉強しました」とに分解しおわるのです。

漢文の分解もこれに同じです。まづ大きく二つに分けてみましょう。無論、これには若干内容の理解もしておらなければならず、何か外形上のみによって形式的に分解できるわけではありません。おぼろげながらも内容を少しく了解しておってもらわなければならんのです。上文の例で言えば、「泰西」すなわち西洋のことでありますが、西洋に何とかと云うことがあるのだな、くらいのことをまづ見抜かなければなりません。そうしますと「泰西有云造化造人兩耳兩目兩手兩足鼻孔亦偶唯一其口口又有齒有似城壘其外有脣有似郭門百爾君子以此可知聞見欲多語言欲稀」の如き一見どう読んだら良いか分からぬ漢字の羅列が、「泰西」が主語で、「有云造化造人兩耳兩目兩手兩足鼻孔亦偶唯一其口口又有齒有似城壘其外有脣有似郭門百爾君子以此可知聞見欲多語言欲稀」が其の作用であると分かり、さらに其の作用の方は「有云~」の部分の「云」という動詞があることから、「云」以下には西洋人の云う内容が来ておろうことが推測できるのです。結局此の文の構造は、「泰西(主語) + 有(叙述語) + 云~(客語)」であると分かり、「~」の部分は西洋人の言葉の内容であることが察せられる。西洋には云々かんぬんと云うことがある、そんな意味であることが分かってくるのです。そこで今度はその「云」以下の内容を見てみますと、「造化造人兩耳兩目兩手兩足鼻孔亦偶唯一其口」の内容がまづ何となくでもよいから了解せられなければなりません。そのやり方が分らぬから困っておるんだ、とおっしゃりたいところでありましょうが、仮にこの句の分析の仕方をここで示したところでやはり初学者の方は納得しなかろうと思うのです。どうしてそこで区切れるのか、どうしてそういう分解が成り立つのか、其の所以が分らないからであります。そもそもさきに日本文の分解を示しましたが、あの分析の仕方に皆様が一応納得せられましたのは、あの文の意味が了解できておったからであります。「初めて漢文を勉強しました」を分解して「初めて」と「漢文を勉強しました」とに分解して、その分解に納得出来たのは是の句の意味を分かっておったからなのです。意味を全く考慮せずに分解するなどと言うことは出来ないのです。よって、多少なりとも其の文の意味を了解しておってもらわなければならないのです。しかし、其れが出来ぬわけでありますから、ここに於いて漢文の勉強は行き詰まるかの如くに思われますが、もちろんそんなことはない。

なんとなれば、分らないといいましても全く分らないわけではない。分るところもありましょう。たとえば「兩耳」「兩目」「兩手」「兩足」などは何も難しいことはない、さらに其の後に「鼻孔亦偶」とありますが、「偶」もやはり「二つ」の意味で「両」に同じでありますから、ここまでで人体のうち対になって存しておるものを列挙しておるのであろうことは分るのです。而して其の後に「唯一其口」とあるのです。ちょっとこれは読みにくいかも知れませんが、文脈から大凡の意味はわかりましょう。つまり耳や目や手足、さらに鼻の穴は二つづつあるといい、では口はどうかと考えてみれば、一つしかない、そんな風に当たりを附けてから原文を見れば「唯一」は「ゆいいつ」と読むのではなく、「唯其の口を一にす」とでも読めばよいことが分るのです。ここまでくれば最初の「造化造人」の部分も神が人を造るに当たって、くらいの意味であろうことが察せれら、よって「造化の人を造る」とでも読めばよいことが分るのです。「造化造人」は「造化之造人也」と同様に考えればよいです。全体で名詞化してます。「造化の人を造るコト・トキは」の意です。

次に「口又有齒有似城壘其外有脣有似郭門」の部分もまづ大まかに其の構造を把握し、分解してみましょう。しばらく見続けておれば以下のような構造であることが必ず看取せられましょう。これは形の上の問題ですから、必ず慣れてもらわなければなりません。

漢文のコツ思想分析2此くの如く対になっておることが分ります。口がどうであるのかと云えば、歯があり、外には唇があるというのです。「城壘」「郭門」はいづれかの意味が分かれば他方の意味もだいたい分かりましょう。すなわち「口には歯があって、城砦に似ておる」というのでありますから、口の外にある唇もまた城砦に類する何か防御のための設備であろうと推測できるのです。ここまで来ればあと一息です。勘がいい方ならば既に文の意義に目途もつきましょう。要しますに、神は人間を作るに当たって耳目手足、鼻孔は二つづつ形成したのに、口ばかりは一つにした、それどころか口には城砦の如く歯もあり、外側には郭の門の如く唇まである、というのです。

「百爾君子以此可知聞見欲多語言欲稀」の「百爾」は「凡百」の意。これまた以下の如く対になっておることが見抜けなければなりません。

漢文のコツ思想分析3

これはもう形の上から分ることでありますから、なんとしてでも気づけるようにしましょう。「百爾君子」は凡百の君子への呼びかけと判断したならば「百爾の君子よ」とでもすればよい。結局、「百爾の君子よ、此れを以って聞見は多からんことを欲するも、語言は稀ならんことを欲するを知るべし」とでも読むことになります。「知」に対して「聞見欲多語言欲稀」の全体が客語になっております。

実際に私が書き写す場合の例

造化造人

実際に細かな文法的分解を試みるのはこのように句の按排を把握して後のことであります。此くの如き分解自体は内容に拘わらず概ね外形に因って為すことができるのでありますから、面倒がらずに練習しなくてはなりません。

  • 練習問題

漢文のコツ思想分析4

「吾守法之臣」の部分などはよく注意してください。吾が法を守るのではありません。「臣」が「守法」の主体(主語ではない)です。物を盗むの人を漢訳して「盗物之人」となりますが、「盗物」の主体が「人」であるのに同じです。「吾」は「守法之臣」に対する修飾語です。「吾父(吾が父)」の「吾」が「父」に対して修飾語であるのに同じです。

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