「於」について

木曜日 , 5, 12月 2013 Leave a comment

白文(六文字):

魚懸由於甘餌 (晉書)

漢文法:

「於」は西洋文典に所謂動詞の格支配に同じであります。上句の例で申せば、動詞である「由」が「我は次に依拠的なる格、すなわち「~に」格なる名詞を取るぞ」ということを表す記号であります。「甘餌」なる名詞の格が「甘餌ヲ」でもなく、「甘餌ト」でもなく、「甘餌ニ」であることを示すのです。動詞の取るべき名詞の格が明瞭であれば、「於」は無くても構いません。上句の「於」も削るに可であります。またここの「於」は松下文法にては前置詞ではなく、前置詞性の単純形式動詞に分類されるものであることにも注意してください。

因みに松下文法にて「可」が依拠性の帰着形式動詞に分類されておりますのは、「知不可驟得」(前赤壁賦)の如き例があるためです。独逸文典流に云えば、「可」は第三格支配の動詞とでも言うことになりましょう。

次に上句の構文を確認しておきます。

魚懸 ⇔ 由於甘餌

「魚懸」自体が主語と叙述語との関係より成る連詞でありますが、名詞化しておるのです。「魚が懸かる」ではなく「魚の懸かるコト」の意です。「魚懸」が判定対象たる主題(修用語)で、「由於甘餌」が其れに対する判定概念(被修用語)です。

訓読:

魚(うお)の懸かるは、甘餌(かんじ)に由る

古歌にも「ちりぬれば、後はあくたになる花を、思ひしらずもまどふてふかな」(古今和歌集)などとありますが、我々もまた花に惑う蝶か。

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