「畏戰之俗」の文法

火曜日 , 26, 11月 2013 Leave a comment

白文(十五文字):

用畏戰之俗以抗百戰之寇惡得不寒心 (新論・國體)

漢文法:

「我が邦の人々は戦を知らずただ天下泰平なるに慣れきり、臆病風に吹かれるばかりのあり様に当たって、日々に戦闘を繰り返し実戦経験豊かなる外夷と一戦構えようというのであるから、まこと寒心に堪えざる次第である」の如き意であります。知っておくべき句形としましては「悪」の用法くらいなもので、それ以外は殊更に文法の勉強などしなくても読めねばなりません。たとえば、「用畏戰之俗」の構造が「用(V)+畏戰之俗(O)」であることは自身の力で見抜くしかない。この構造は其の後の「抗(V)+百戰之寇(O)」と同じでありますから、どちらか一方が分れば他方も分りましょう。「用畏戰之俗」を始めから「戦を畏るるの俗を用ふ」などと読み下すのではなく、無論出来るのならば其れでよいのでありますが、考え方の順序としましては、まづ「用」と「畏戰之俗」とに分析し、然る後、「畏戰之俗」の分解に取り掛かるのです。これも文法上は「畏+戦之俗」などとも分解しうるわけでありますが、それが不可なることは文脈から決定するしかありません。「畏戰之俗(戦を畏るるの俗)」は「俗畏戰(俗として戦を畏る)」の表現形式を変じたものです。「鳥高飛(鳥が高く飛ぶ)」を変じて「高飛鳥(高く飛ぶ鳥)」とした場合、「高飛」の「鳥」に対する関係を「連主(主体に連なる)」というのでありますが、それに比すれば「畏戰」の「俗」に対するを関係を「連修(修飾性概念に連なる)」または「連属(属性概念に連なる)」とでもすべきでありましょうが、松下文法ではこれを主客体以外に連なるとして「連外」と名付けます(七五六項)。

「惡」はどの漢文参考書にも載っておりましょうから、その説明は省きます。漢文法上は「不定副詞」です。不定と言う実質的意義を持った修用語であります。下詞を不定的に修飾しておるのです。「不」や「未」が下詞を否定的に修飾しておるのに同じ関係です。「惡得不寒心」は「寒心せざるを得んことを悪(いづこ)に於いてせん」というわけであります。「いづこ(何処)」は名詞でありますが、「悪」は英語の「where」に同じくどこまでも副詞であるというのみです。

訓読:

戦を畏るるの俗を用ひ、以って百戦の寇に抗す、悪(いづく)んぞ寒心せざるを得ん

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